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令和8年4月1日に都市公園法に基づく都市公園として開設する「県営越谷公園」(越谷市北後谷、現埼玉県県民健康福祉村)及び同公園内の施設について、ネーミングライツ事業に係る愛称の命名権者(ネーミングライツパートナー)を募集します。https://www.pref.saitama.lg.jp/a1105/news/page/news2025100301.html
はじめに — 今回の取り組み
最近、埼玉県が「令和8年度に開設予定の県営越谷公園(現在の県民健康福祉村)および公園施設」に対して、ネーミングライツパートナー(命名権者)を募集する旨を発表しました。埼玉県公式サイト
これは、指定された名称(愛称)を付与する権利を持つ企業・団体を、一定額の対価で募るものです。命名権料は公園の整備・魅力向上・施設の老朽化対策などに使われる予定とされています。
以下では、このニュースを切り口に、ネーミングライツという制度の背景・意義・期待される効果、注意すべき点などを整理してみます。
ネーミングライツとは? — 郷土と結びつく「名前」の力
ネーミングライツ(命名権)とは、公共施設やスポーツ施設、イベント会場などに“名前をつける権利”を、企業・団体などが取得する制度です。例えば「〇〇スタジアム」「△△アリーナ」「□□公園」といった名称を付すことができ、一般の呼称として定着させることができます。
多くの人は「広告的な側面」をイメージしがちですが、それだけではありません。以下のような意義・価値も持っています。
◎ 利用価値の向上につなげられる
命名権料を、施設の清掃、バリアフリー整備、案内表示の改善、植栽や照明のグレードアップなどに回すことで、利用者にとって快適な空間をつくれます。ニュースでも、越谷公園では「利用環境や自然環境の魅力アップ、公園施設の老朽化対策等」に活用すると明記されています。
◎ 地域とのつながりを創る
公共施設に企業名やブランド名をつけることで、地域住民にもその企業が“地域貢献している会社”という印象を与えられます。地元の企業が命名権を取得すれば、地元応援・郷土愛の表現にもなります。
◎ 応援・共感の表現手段として
「この施設を応援したい」「この街を盛り上げたい」という思いを名前を通じて発信できるのが、命名権の魅力のひとつです。単なる広告とは違い、公共性を帯びた場所を支えるパートナーシップの側面があります。
◎ ブランド認知・PR効果
命名された施設は多くの人が目にし、また紹介される可能性が高くなります。「〇〇社公園」「□□社スタジアム」という名称が、メディア・広告・地域情報で繰り返されれば、企業やブランドの露出効果が期待できます。
今回の越谷公園ネーミングライツのポイント
ニュース発表によれば、このプロジェクトには以下のような特徴や条件があります。
- 募集期間・応募要件:令和7年10月3日~11月14日。
- 命名権料(希望額):
・公園名称:年額100万円(税別)
・テニスコート(8面):年額20万円
・その他施設:年額10万円 - 契約期間:5年(最長10年まで応募可)。満了後は優先交渉権が付与される。
- 応募の扱い:公園名称と施設名称は別々に応募可能。ただし、公園名称を取得した者が自動的に施設名称も取得できる。
- 命名権料の用途:公園の魅力向上、老朽化対策などに充てる。
これらの条件を見ると、「地域公共施設としての性格を保ちつつ、企業・団体も参画しやすい設計」を意図していることが見て取れます。
命名による効果(メリット)を具体的に考える
命名権を取得する企業・団体側から見たメリットを、典型的なものを列挙すると、次のようになります。
- 認知拡大・露出機会
施設名が日常的に使われることで、看板・チラシ・地図・交通案内などに自然と名前が露出します。「〜○○公園」「○○社スタジアム」などという名称が広く使われれば、企業名の認知が地域に根付きやすくなります。 - イメージ向上・信頼感の醸成
「公共施設を支える企業」=「地域のために貢献している」というイメージになる可能性があります。その結果、地域住民・来訪者からの信頼感向上が期待できます。 - PR・マーケティングとのシナジー
イベントやPR活動をその施設と連動させれば、相乗効果が生まれます。命名権者限定の特典・キャンペーンなどを展開することも可能です。 - 地域との関係構築
地元自治体や住民団体、利用者とのネットワークを築きやすくなります。地域に根ざした活動をする際の土台として機能し得ます。 - コスト対効果の可能性
一次的な出費ではありますが、長期的には“広告費以上の価値”を提供できる機会になる可能性があります。
注意すべき点・リスク
ただし、命名権を取得・運用するうえで気をつけたい課題もあります。
- 名称の受け入れ・定着性
強すぎる企業名やブランド名だと、地域住民に「広告臭が強すぎる」と抵抗を持たれることがあります。名前が自然に受け入れられ、かつ違和感がないか検討する必要があります。 - 更新リスク・契約期間の制約
契約期間が終了すれば命名権が見直される可能性があります。継続するには、実績や関係性を築いておくことが重要です。 - 公共性とのバランス
公共施設の性格を損なわないよう、企業のイメージや活動内容が地元・利用者にとって適切かどうか配慮する必要があります。 - 費用対効果の見極め
命名料額に対して得られる認知・イメージ向上効果が見合うかどうかを慎重にシミュレーションするべきです。 - 運用・管理負荷
名称変更に伴う案内板・看板・ウェブ表示・印刷物等の切り替え作業や費用を負担するケースもあります。
「ネーミングライツ購入を検討してみてはいかがでしょうか」
今回の越谷公園の事例は、地域公共施設を企業・団体とともに育てていく志向が感じられます。命名権料は、使途を明示して「施設の魅力アップ」のために使われるという点も、取得者にとって安心材料になるでしょう。
もし、地域で事業を営む企業や団体、あるいは地域活性化を目的とする法人があれば、このようなネーミングライツの取得を “広告宣伝”という枠を超えた“地域貢献”の選択肢 として検討してみる価値は十分にあると思われます。
具体的には、次のような検討ステップをおすすめします:
- 対象施設の利用実態や客層を調べる
どのくらいの人が、どの時間帯・目的で使うか。名称が露出されるメディア頻度はどうか。 - 支出対効果をシミュレートする
年間命名料・運用コスト(看板改修・印刷・広報切替など)を見積もり、得られる広告効果・信頼向上を見積もる。 - 地域との関係を考慮する
地元企業・住民団体の理解を得られる名称案をつくる。公共施設の性格を尊重するデザインやネーミングに配慮。 - 長期視点での運用計画を立てる
契約更新、命名権期間中のコミュニケーション戦略、公共性の維持などを見据えておく。 - 施設運営者と役割分担を確認する
名称変更に伴う整備・案内板更新・看板交換などの負担をどちらが行うか明確にする。
こうしたステップを踏めば、命名権は単なる広告施策以上の価値を生み出す可能性を秘めています。
おわりに
今回の越谷公園ネーミングライツ募集は、公共施設と企業・団体を結びつける現代的な試みのひとつと言えるでしょう。「公園を支えるパートナー」として名を残す、という考え方が、地域との関係性や利用者体験を豊かにする可能性を秘めています。
もし、あなたやあなたの関係する組織で「ネーミングライツを検討してみたい」という興味があれば、ぜひ一度、対象施設や地域特性、コストと効果を具体的に検討してみてはいかがでしょうか。

