栃木県栃木市が始める「ネーミングライツ事業」とは?

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※アイキャッチ画像はイメージです。

ネーミングライツ事業は、施設の安定的な管理、運営のための財源を確保するとともに、官民連携による相互の活性化を図るため、市有施設に愛称をつける権利(ネーミングライツ)を企業または団体に付与するものです。https://www.city.tochigi.lg.jp/soshiki/15/23194.html

まず、ニュースソース(栃木市公式ウェ照)を確認すると、栃木市では 市有施設に「愛称(通称名)」を付ける権利=ネーミングライツ を、企業や団体に付与する制度を運用しています。 栃木市公式ウェブサイト
正式名称そのものは変えず、あくまで「一般的な呼び名」として広報誌やウェブサイト、市の案内で愛称を使う方針です。

たとえば現在、以下のような愛称が既に設定されています:

  • 「マルワ・アリーナとちぎ」:市総合運動公園の体育館
  • 「とちぎ岩下の新生姜ホール」:栃木文化会館(文化施設)
  • 「きららの杜とちぎ蔵の街楽習館」:市民交流センター 五月女総合プロダクト株式会社
  • 「ニッコークリエートスポーツフィールドとちぎ」:総合運動公園陸上競技場

さらに、最近では岩舟文化会館(コスモスホール)のネーミングライツ事業者が決定しており、令和8年4月1日から「ホリ電コスモスホール」という愛称使用が始まります(3年間)

こうした動きから、栃木市は「公共施設の愛称付与」を通じて、施設運営の安定や財源確保、地域と企業の連携強化を図ろうとしています。


背景:なぜネーミングライツを導入するのか?

ネーミングライツ導入の背景には、以下のような課題や目的があります。

1. 財源不足・維持管理コストの補填

公共施設を維持・管理するには、人件費、メンテナンス費、修繕費など相当なコストがかかります。一般予算だけでは賄いきれない都市も多く、別の収入源を模索する必要があります。ネーミングライツ料はその補填のひとつとなります。
栃木市でも、愛称使用料(ネーミングライツ料)は施設の管理運営に充てられることが明示されています。

2. 官民連携・地域活性化

単なる広告料のやり取りにとどまらず、「公共施設を通じた地域との関わり」を深化させたいという意図があります。ネーミングライツを通じて、企業と市や住民との結びつきが強まる可能性があります。栃木市の公式説明にも「官民連携による相互の活性化を図る」ことを目的とするとの記載があります。

3. 愛称導入による施設の魅力アップ

「施設名」として親しみやすい呼び方があると、住民や利用者に親近感が出やすく、施設を身近に感じやすくなります。たとえば「岩下の新生姜」という地元企業と結びつけた名前は、地域性を感じさせ、話題性も持ちます。

4. 収入の多様化・リスク分散

税収や補助金に頼りきる体制では、社会情勢の変動に脆弱です。ネーミングライツを活用すれば、民間資金を取り込みつつ公共サービスを支える選択肢が増えます。


ネーミング(愛称)を付けることで得られる主な効果

ネーミングライツ導入の「もうひとつの利点」は、単なる広告料以上の効果をもたらす可能性がある点です。

A. 広告・認知効果

施設名と一緒に企業名・ブランド名が掲示されたり、案内板やポスター、ウェブなどで露出したりすることで、自然と目に触れる機会が増えます。イベントなどでアナウンスされるたびに名前が出ることもあり、広報効果を持ちます。

B. 地域との“つながり”をアピール

地域住民の視点から、「この企業は地域を大事にしているんだな」「地域の一員なんだな」と感じてもらえるきっかけになります。企業が地域貢献を明確に示す手段として、信頼感を育むことも可能です。

C. 利用価値を高める(施設の魅力向上)

“ただの施設”ではなく、「○○(企業名)ホール」「○○スポーツフィールド」などの愛称が付くことで、印象が向上し、利用されやすくなる可能性があります。施設イメージの底上げにつながることもあります。

D. 経済波及効果

施設利用者の増加やイベントの誘致がしやすくなれば、飲食店・宿泊施設・交通分野など地域経済への波及効果も期待できます。


注意すべきリスク・留意点(第三者視点からの視点)

ただし、ネーミングライツを導入する場合、以下のような点に注意しておく必要があります。

  • 企業・団体の信用性:契約先が突然経営不振になると、ネーミング料の未払い・契約解除というリスクがあります。実際、他地域で命名権料未払い・契約解除に至った例も報じられています。 下野新聞デジタル
  • 命名によるイメージのミスマッチ:施設の性質・地域の歴史性・住民感情とそぐわない名称を付けると批判を招くことがあります。
  • 契約期間・条件設定:あまり短期すぎると継続性がなく、長すぎると将来の見直しが難しくなります。契約条件や最低対価・愛称制約などを明確に定める必要があります。
  • 地域の反発・“広告過剰”な印象:公共性の高い施設に企業名をズラリと入れすぎると、住民から「公共性が薄れた」という印象を抱かれる可能性もあります。

こうしたリスクを抑えつつ、透明性・公正性を確保した運用が重要です。


栃木市のネーミングライツ制度・事例:実際の数字

栃木市公式情報をもとに、具体的な事例をいくつか見てみましょう。

施設/対象愛称(通称)対象施設年額ネーミング料契約期間等
総合運動公園体育館マルワ・アリーナとちぎ体育館80万円R2.4〜R9.3 など 栃木市公式ウェブサイト
文化会館とちぎ岩下の新生姜ホール栃木文化会館(契約例)R3.4〜R8.3 Newscast
市民交流センターきららの杜とちぎ蔵の街楽習館市民交流センター100万円2024年4月〜2029年3月 五月女総合プロダクト株式会社
陸上競技場ニッコークリエートスポーツフィールドとちぎ総合運動公園陸上競技場100万円契約期間:令和6年4月〜令和16年3月(10年) 栃木市公式ウェブサイト
岩舟文化会館ホリ電コスモスホール岩舟文化会館65万円令和8年4月〜令和11年3月(3年) 栃木市公式ウェブサイト

これを見ると、施設の規模や社会的注目度に応じて対価(年額)や契約期間が変動しており、比較的柔軟に制度が運用されていることがうかがえます。

また、栃木市では「施設指定型」(市があらかじめ対象を決めて募集)と、「企画提案型」(応募者が希望施設を提案できる方式)の両方を採用しており、柔軟性を持たせようとしている点も特徴です。


なぜ「命名権を購入する」という選択肢も検討すべきか?

ここまで見てきたように、ネーミングライツは単なる広告出稿とは違った「公共性とつながる広告手法」です。以下のような企業・団体には特に魅力的な選択肢になり得ます。

  1. 地域密着性を強めたい企業
     地元に根ざす企業であれば、「このまちの施設名」を冠することで、地域社会との一体感をアピールできます。
  2. ブランド認知を一定範囲で広げたい中小企業・団体
     全国規模の広告は経費が大きくなることも多いため、地域範囲での認知拡大を狙う際、公共施設愛称という“案内看板”として機能する場は有効です。
  3. CSR(社会貢献)を重視する企業
     単なる広告目的ではなく、「まちづくり」や「地域貢献」を示すことができ、社員や住民、ステークホルダーにもポジティブな印象を与えられます。
  4. 長期的な視点で施設と連携を図りたい団体
     イベント共催や施設利用料優遇など、ネーミングライツ契約に加えて“役務提供・対価提供”の形で付加価値を組み込むことも可能です。
  5. 差別化・話題性をつくりたい
     地元の話題になる愛称づくり(ユニークなネーミング)を工夫することで、マスメディアで取り上げられる可能性も高まります。

まとめ:第三者視点で見た「ネーミングライツ」の価値と提案

栃木市のネーミングライツ事業は、施設運営の安定化と地域と企業との“つながりづくり”を両立しようとする取り組みです。広告効果や収益獲得だけにとどまらず、施設の魅力向上・地域へのメッセージ発信・住民との結びつきを強めるツールとして活用できる点が大きな魅力です。

もちろん、契約先の信用性、名称の選定、契約期間の設計、地域感情との整合性など慎重に設計すべきポイントもあります。しかし、それらを丁寧に検討・対応できれば、ネーミングライツは単なる「広告」以上の価値を生み出す可能性があります。

もしあなた(あるいはあなたの所属する企業・団体)が、地域に根づきながら認知を拡大したい、地域貢献を示したい、公共施設との関係を築きたいとお考えであれば、ネーミングライツ購入という選択肢を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

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