※アイキャッチ画像はイメージです。
令和7年度に開館予定の「総和地域交流センター」 についてネーミングライツ命名権者を募集します。https://www.city.ibaraki-koga.lg.jp/soshiki/zaisankatsuyo/namingright/20689.html
はじめに — “名前を付ける”という応援のカタチ
公共施設やスポーツ施設、文化ホールなどに、企業名・ブランド名などを“愛称”として付けること──これが「ネーミングライツ(命名権)」と呼ばれるしくみです。これは単なる広告ではなく、地域とのつながりを育みながら、施設を支える財源を確保する手法でもあります。
茨城県古河市では、令和7年に開館予定の「総和地域交流センター」に対し、このネーミングライツを付与する企業を募集しています。名称には「ふくろうの森プラザ」という呼称を含める条件なども定められています。古河市公式ホームページ
この募集をきっかけに、ネーミングライツの意義や可能性を改めて見つめ直してみたいと思います。
背景:なぜ自治体は命名権を導入するのか?
公共施設の建設・維持管理には、非常に多くの費用がかかります。施設の掃除・修繕・光熱費など、年間の運営コストは馬鹿になりません。税収だけでは継続的な運営を賄うには限界がある自治体も少なくありません。
そこで、ネーミングライツを導入して“名称を使う権利”を企業などに販売し、その収入を施設の管理や運営にあてるという仕組みが注目されてきました。これにより、自治体にとっては安定した収入源の一つになり得ます。
古河市の募集案内もまさに同様の発想です。「命名権を法人に付与」することで対価を得て、施設の管理・運営などに活用したいという狙いが打ち出されています。
ただし、導入には慎重さも必要です。愛称が地域に馴染むかどうか、利用者の違和感はないか、ブランド名が施設のイメージを損なわないか、などの検討が欠かせません。
古河市「総和地域交流センター」の募集概要(例として理解する)
少し具体的に、古河市の募集要項を見ておきましょう。これを事例に、命名権導入時に想定される条件などが見えてきます。
- 募集対象:令和7年度開館予定の施設「総和地域交流センター」
- 希望金額:80万円/年
- 契約期間:3年以上5年以内
- 命名条件:「ふくろうの森プラザ」という名称を含めること
- 応募資格:法人(民間事業者)であること
- 希望金額(年額):施設維持やサービス向上に回せる金額を確保するための基準
- 契約期間:短すぎると収入が不安定に、長すぎると柔軟性を失うため、3〜5年程度とするのが妥当なケース
- 名称条件:地域性を残す、既存施設名を活かすなど、利用者にとっての違和感を抑える工夫
- 法人資格:信用性や継続性を担保するため
ネーミングに「ふくろうの森プラザ」という名称を含めることにより利用者の混乱を避けているところは大きなポイントになります。
このような枠を定めることで、「ただ名前を貸すだけ」の広告にならず、施設や利用者との適合性を保つことができます。
ネーミングライツの意義・効果
では、命名権を導入することで、どのような効果が期待できるのでしょうか?広告的な側面だけでなく、利用価値や地域とのつながりまで含めて考えてみます。
1. 広告・認知効果
最も分かりやすいメリットは、施設名などに自社名が掲出されることによる“認知の拡大”です。施設の看板・案内板・パンフレット・Webサイト・ポスター・チラシなど、あらゆる媒体に名前が露出します。イベント時にはアナウンスされることも多く、来訪者の印象に残る機会が増えます。
この「場を借りて名前を見てもらう」効果は、通常の広告とは異なる信憑性も伴います。公共施設に名を冠するということ自体が、ある種の信頼性・責任感を感じさせるからです。
2. 利用価値の向上(施設側の視点)
施設側から見ると、ネーミングライツ収入があることで、建物内外の設備改善・清掃・照明・空調・内装更新などに資金を振り向けやすくなります。これにより、利用者の満足度が上がり、利用率の向上などにつながる可能性があります。
さらに、「名前を付けて応援してくれている企業がいる」というメッセージにもなります。利用者・地域住民にとって、施設が“単なる箱”ではなく、地域で支えられ育てられているものだという価値が感じられるでしょう。
3. 地域とのつながり・共感
命名権は、地域との接点を創る手段でもあります。たとえば、地元企業が名前を冠すれば、「自分たちのまちを応援している企業だ」という認識が住民に生まれます。地元出身・地元基盤の強い企業であれば、その想いがストーリーとして共有されやすくなります。
また、施設が使われる場面(イベント、祭り、講座など)で「○○社~」「○○センター ~」と呼ばれることで、住民も自然にその名前を使うようになります。名前が地域に定着することで、“あなたのまちの施設”という親近感も醸成されます。
4. ブランド価値・企業イメージのアップ
命名権を取得する企業側から見ると、地域や公共性を重視する姿勢を見せることができます。これは企業の社会的責任(CSR)・社会貢献の一環として評価されやすく、地元住民や取引先・顧客からの信頼を得る材料にもなります。
広告として強く出すだけでなく、「この地域を応援します」「地域と一緒に育てていきたい」というメッセージを示すことができるのです。
他自治体の事例から学ぶポイント
先にご紹介した、三重県津市・静岡県富士市のネーミングライツ導入事例にも、重要な示唆があります。
- 津市では、複数の公共施設(スポーツセンター・球場・テニスコート・歩道橋など)でネーミングライツの募集を実施。年額ライン(たとえば球場300万円、テニスコート100万円など)が設定されています。
- 富士市では、新設予定の総合体育館について、年間500万円以上の希望金額を提示し、「ふじ」「アリーナ」という名称要件も設けられています。
これらから分かるのは:
- 施設の規模や利用頻度に応じて価格設定
二つの事例とも、規模の大きな施設(体育館やスポーツセンター)には高額な設定をしており、露出度との兼ね合いを重視しています。 - 愛称条件を入れることで“地域らしさ”を担保
富士市のように「ふじ」や「アリーナ」という語を入れるように求めることで、施設が地域性を失わないよう配慮されています。 - 多様な施設を対象にすることで、参入機会を増やす工夫
歩道橋や小規模な公共構造物なども対象にすることで、中小企業にもチャンスを与える設計がされています。
これらの工夫を、自分が検討している地域や施設にどう当てはめるかを考えることが、成功の鍵になるでしょう。
注意すべき点・リスクも忘れずに
ネーミングライツは魅力的ですが、導入には慎重さも必要です。以下、注意点をいくつか挙げておきます。
- ブランドとの相性
施設の性格や利用者層、地域の文化性と合わない名称・企業名が付くと、違和感や反発を生む可能性があります。 - 固定名との抵抗感
住民にとって慣れ親しんだ施設名、通称名があれば、新しい名称に抵抗が出ることがあります。「名前を変えることそのもの」に反感が出る可能性を想定すべきです。 - 命名権料と対効果のバランス
支払額に見合う露出・認知効果があるかどうかを見極めることが大切です。あまりに高額であっても、利用者数や認知の伸びが伴わなければ割に合わない投資になってしまいます。 - 契約中断・契約終了後の対応
契約期間が終了したとき、あるいは途中解除があったときの名称変更や表示更新コストなども織り込んでおく必要があります。 - 透明性・公平性
公募方式で適切な手続きを行い、誰にでも参入可能であることを明示することで、住民・他企業の理解を得やすくなります。
まとめ:ネーミングライツは“応援”であり“投資”でもある
古河市の「総和地域交流センター」の事例は、ネーミングライツが単なる広告施策を超えて、地域・施設・企業をつなぐ可能性を秘めていることを示しています。名称を付けることは、「応援」「共育て」「地域貢献」のメッセージを発信する手段ともなります。
もしあなたやあなたの会社・団体で、地域への関わりを模索しているなら、ネーミングライツ購入を一案として検討してみてはいかがでしょうか。投資としてのリターン(認知やブランド価値)と、地域貢献という意義を両立させるチャンスになるはずです。
※当記事は第三者視点でまとめたものであり、古河市および他自治体への提案を目的とするものではありません。実際に検討される場合は、各自治体の募集要項や現地事情を詳しく確認されることをお勧めします。
