その名づけ、大丈夫?命名事故を防ぐためのネーミングの心得

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第1章:はじめに 〜名前がもたらす“意味”と“誤解”〜

名前(ネーミング)には力があります。
それは単なる記号ではなく、他者に意味や印象を伝える「社会的なメッセージ」であり、時にその人や物の“イメージそのもの”として受け取られます。

だからこそ、ネーミングには期待が集まります。「面白い名前をつけたい」「思い入れを込めたい」「話題になってほしい」と願うのは自然なことです。
一方で、名づけには“誤解”や“炎上”のリスクもつきまといます。言葉の響きや意味が、文化や文脈によって思わぬ方向に受け取られてしまうことがあるのです。

これは、企業のブランドネームだけに限った話ではありません。
近年では、創作物のタイトル、イベント名、ペットや車の名前、さらには自分以外に名づけるハンドルネームやサークル名といった、個人発の“パブリックネーミング”も一般化しています。
私たちが運営する命名権のフリーマーケット「メイメイ」でも、こうした名前の売買が日々行われています。

こうした自由な名づけ文化が広がる一方で、名づける人も、名前を使う人も、意図しない「命名事故」に巻き込まれてしまうケースも少なくありません。
SNSで炎上してしまったり、イメージダウンにつながったり、後から改名を余儀なくされたりすることもあります。

めいめい犬
めいめい犬

この記事では、ネーミングで意図しない「命名事故」を避けるために、どのような点に注意すればよいのか、実例と共に解説していきます。


名づけは楽しい創造行為であると同時に、他者との関係性を前提とした“社会的な約束”でもあります。
命名する人も、名前を受け入れる人も、よりよい関係性を築くための視点として、本記事をぜひお役立てください。

第2章:命名事故とは? 〜SNS時代の“拡散リスク”〜

「命名事故」とは、意図せずして誤解・炎上・不快感・風評被害などを招いてしまうような名前の付け方を指します。
言葉そのものに問題がある場合もあれば、文脈や文化の違い、時代背景とのズレなど、思いもよらぬ形で波紋が広がることもあります。

たとえば、ある商品名が英語圏で卑猥な意味ととらえてしまったり、ある地名と組み合わせた施設名が不適切な略語として捉えられてしまったり。
命名者に悪気はなくても、受け手が感じるイメージとのギャップによって、“事故”が発生してしまうのです。


■ SNS時代における命名事故の特徴

かつてであれば、ネーミングが周囲に誤解を与えたとしても、それが伝播する範囲はごく限られたものでした。
しかし、今は違います。X(旧Twitter)やInstagram、YouTubeなど、誰もが拡散力を持つ時代です
一つの投稿が一瞬で数千、数万とシェアされ、「おかしな名前」として全国レベルの話題になってしまうことも珍しくありません。

こうした“炎上型”の命名事故には、次のようなリスクが伴います:

  • 名付けた本人がバッシングを受ける
  • 命名を許可した側のブランド価値が毀損される
  • 関係者が意図しない謝罪や撤回に追い込まれる
  • 名前そのものが「ネタ化」され、創作物や本来の内容が正当に評価されなくなる

つまり、命名事故は“笑い話”で済まない可能性を常に含んでいます。
ネーミングライツを通じて何かを表現しようとする以上、名づける側も、受け入れる側も、その言葉が持つ複数の「顔」に気づいておく必要があるのです。

第3章:命名事故の典型パターンとその実例

命名事故は突発的な出来事のように見えて、実は一定の“型”に当てはまることが多くあります。
この章では、特に個人間のネーミングライツ取引において気をつけたい、代表的な4つのパターンを紹介します。


3-1. 言語・文化の壁による誤解

異なる言語や文化圏での意味や発音が、意図しない誤解を生むケースです。

  • 大人のクリームパイ
     日本マクドナルドが販売したスイーツ「大人のクリームパイ」は、日本では「濃厚」「贅沢」といったポジティブな意味を込めて命名されたものの、英語圏では性的な意味を持つスラングとして知られており、SNSで話題になりました。
     参考:ロケットニュース24
  • CHIMPO(Chief Impact Officer)
     ヘンリー王子が就任した米企業の役職名「Chief Impact Officer」の略が「CHIMPO」と表現され、日本語話者には不適切な俗語と捉えられる可能性があるとして注目されました。
     参考:日刊スポーツ

3-2. 音や意味の連想による誤解

名前の響きや組み合わせが、意図しない連想を引き起こすケースです。

  • スーパーの店名
     特定地域のスーパーの店舗名では、店名と地名を合わせた際に、俗語を連想させるような読みになるとしてSNSで話題となりました。あくまで偶然の一致ではありますが、公の場で使用される名称として配慮が必要です。
  • DQN(Deep Q-Network)
     2015年、Google傘下のDeepMindが開発した人工知能「Deep Q-Network」は、その略称として「DQN」を採用しました。しかし、日本において「DQN」は、インターネットスラングとして「非常識な人」や「粗暴な人」を指す蔑称として広く認知されています。そのため、Googleの発表に対して日本のネットユーザーからは「命名事故ではないか」といった反応が相次ぎました。このように、技術的には適切な略称であっても、文化的背景や既存の用語との重複により、予期せぬ誤解や批判を招く可能性があります。
     参考:Wikipedia – DQN

3-3. 略語・頭字語が問題になるケース

名前を略した際に、意図しない意味や既存名称と重なることで誤解を招くことがあります。

  • SMAP(Soil Moisture Active Passive)
     NASAが開発した地球観測衛星「SMAP」は、土壌水分を測定する国際的な科学プロジェクトです。しかし、日本では同名の国民的アイドルグループ「SMAP」の存在が大きく、科学プロジェクトであっても文脈によっては混同やパロディ化の対象となることがあります。
     参考:Wikipedia – SMAP (衛星)

3-4. 社会的・事件的文脈との偶然の一致

社会問題や事件に関わる言葉と偶然一致し、名前が炎上の引き金となることもあります。

  • 例:過去に重大事件で使われた地名・人名を名称に含んでしまい、意図せず被害者・関係者への配慮に欠けると批判される
  • 例:政治的・宗教的な用語との偶然の一致により、不本意な文脈で拡散される

次章では、これらとは別に「他者の商標やブランド名に類似してしまうリスク」について、個人の名づけでも起こりうる問題として詳しく見ていきます。

第4章:その名前、略したら大丈夫? ― 無意識の連想・略称・スラングへの注意

第3章では、命名事故が「意図しない意味」や「偶然の連想」から生じることを紹介しました。
見た目は魅力的でも、音にしたとき・略したとき・外国語に訳したときに、
まったく違うニュアンスを帯びてしまうことがある——
これが命名事故の本質です。

ここでは、そのような事故を避けるために、名づけの際にできる簡単な確認方法を中心にお伝えします。

1. 英語に翻訳してみる

日本語では自然でも、英語に訳すと意外な意味になることがあります。
また、造語や略語でも、英語話者がどう感じるかを知っておくと安心です。

  • Google翻訳やDeepLなどでざっくり英訳してみる
  • Urban Dictionary(英語スラング辞典)で単語を調べてみる
  • 英訳した語句をGoogle検索し、どういった文脈で使われているか確認する

2. 略称・アルファベット表記で検索してみる

正式名称では問題がなくても、略したときやイニシャル化したときに他の意味と重なることがあります。
略語はSNSやネットスラングとして普及している場合もあり、意図せず既存の語と混同されるリスクがあります。

  • 略称にしてGoogle検索・Twitter/X検索してみる
  • ハッシュタグで使われていないか確認する
  • 略した語が他のジャンルで使われていないかをざっと確認

3. 声に出してみる・人に聞かせてみる

文字だけでは気づかない発音の印象や音のつながりが、思わぬ誤解を生むことがあります。
言葉の響きによる“なんとなくの連想”は、非常に主観的で予測しにくいため、他人の反応を聞くことが一番の確認方法です。

  • 実際に声に出して読み上げてみる
  • 身近な人に名前を読み上げてもらい、第一印象を聞いてみる
  • 特に年齢層や文化背景の異なる人に聞いてみると気づきがある

ダブルチェックのすすめ

命名は名づける側だけで完結するものではなく、誰かに使われ、見られることで初めて意味を持つものです。
そのため、名づける側だけでなく、名前を受け入れる側(作品、イベント、団体など)も以下の視点でチェックしておくことが望ましいです:

  • 略称・響き・翻訳に問題がないか
  • 「言われてみればそう聞こえるかも」というパターンがないか
  • 修正の余地がある場合は、命名者とコミュニケーションを取れる状態にしておく

まとめ:気づくことが防ぐことになる

命名事故の多くは、悪意ではなく「気づかなかった」ことが原因で起こります。
だからこそ、少し立ち止まって、「これ、大丈夫かな?」と気づく習慣を持つことが何よりの予防策になります。


次章では、これまでの内容を総括し、命名時に確認しておきたいポイントを一覧にしたチェックリストをお届けします。
ネーミングの前後でさっと確認できる実用的な内容にまとめます。

第5章:命名事故を防ぐためのチェックリスト

ここまでの記事では、命名によって起こりうる事故や誤解、そしてそれを防ぐための視点を紹介してきました。
名づけは創造的で自由な営みですが、同時に「どう受け取られるか」という社会的な側面も大切にする必要があります。

ここでは、実際に名前を付ける際に使える確認項目の一覧をまとめました。
命名者・受け入れ側のどちらにも参考になる内容ですので、ネーミングの前にぜひ一度見直してみてください。


✅ 命名前チェックリスト(名づける人向け)

チェック項目内容
❏ 発音や語感に違和感がないか声に出してみて、変な響きになっていないか確認する
❏ 略したときに誤解を生まないか略称・頭字語が他の意味を持たないか調べる
❏ 英語に訳して意味が変にならないかスラングや俗語に該当しないか確認する(Urban Dictionary等)
❏ SNSや検索で類似の用語がないか略称・名称をGoogle/Xで検索し、意外な使われ方をしていないか確認
❏ 他者の創作や団体と混同しないかハンドルネーム・作品名・サークル名などが既存と被っていないか

✅ 採用前チェックリスト(受け入れる人向け)

チェック項目内容
❏ 名前の意味や文脈がふさわしいか自分たちの活動・作品に合った価値観を持っているか
❏ 読んだ人・聞いた人に誤解を与えないか一般的な感覚でネガティブに受け取られないか
❏ 略称・短縮名でトラブルにならないか将来的に略して呼ばれたときの印象も確認する
❏ 万が一のトラブル時に修正できるか柔軟に対応できる体制・ルールを整えておく

まとめ:命名は「関係づくり」の第一歩

名前は、ものや人の“顔”となり、社会とのつながりをつくる最初の接点です。
だからこそ、名づけには自由と責任の両方が求められます。

完璧な名前である必要はありません。
けれど、「ちょっとだけ気をつけてみる」ことで、その名前が多くの人に親しまれるものへと育っていく可能性が広がります。

命名者も、受け入れる側も、互いに思いやりをもって、
気持ちよく名前が使われる文化を一緒につくっていけたら——
それが「ネーミングライツ(命名権の売買)」という新しい文化の広がりにも、きっとつながっていくはずです。

▼「メイメイ」で、名前を通じて応援とつながりをつくる

名前には力があります。
そして、その名前を誰かに託すことは、ただの呼び名以上にストーリーや責任、関係性を共有する行為です。
私たちが運営する命名権のフリーマーケット「メイメイ」は、まさにその力を活かすサービスです。

「メイメイ」は、創作物や活動、持ち物などに命名権を設定し、その名前をつける“役割”をスポンサーに託すことができるサービスです。
スポンサーは、命名によって支援するだけでなく、その名前とともにプロジェクトや活動の一部となります。
ただの投げ銭ではなく、「名前を託す」「名乗ってもらう」という関係が、応援者との共創を可能にします。


例えば、こんな方に

  • 創作活動や小さな企画を応援してくれる人を見つけたい方
  • 持ち物やプロジェクトに“意味のある名前”を加えてみたい方
  • ただの支援ではなく、一緒に関わってくれる仲間がほしい方

スポンサーにとっても、それは“名づける責任”を担う参加体験です。
「名前をつけた」からこそ、その活動に愛着を持ち、共に見守っていく関係が生まれます。

▶ 詳しくはこちら:
メイメイ公式サイト
CAMPFIREプロジェクト紹介ページ

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